平成29年度税制改正における焦点の一つとなる配偶者控除の見直しの議論が本格化しています。
配偶者控除(所得税:38万円、個人住民税:33万円)及び配偶者特別控除(所得税:最高38万円、個人住民税:最高33万円)は、納税者が一定所得金額以下の配偶者がいる場合、その納税者本人の担税力の減殺を調整する趣旨から設けられたものです。配偶者控除については、就業に対する税の中立性の観点から、見直しが必要との意見が高まっています。
政府税制調査会は、配偶者控除の見直しについて、すでに平成26年11月に5つの見直し案を提示しています。それは、①配偶者控除の廃止、②配偶者控除の適用に所得制限を設ける、③いわゆる移転的基礎控除(配偶者の所得計算で控除しきれなかった基礎控除を納税者本人に移転すること)の導入、④いわゆる移転的基礎控除の導入・税額控除化、⑤「夫婦世帯」を対象とする新たな控除の導入の5案です。
この中では、自民党幹部が平成29年度税制改正に盛り込みたいとの発言が報道されたことや、働き方に中立といった観点などから、⑤の「夫婦控除」が有力候補として浮上しています。ただし、税負担能力への配慮や税負担の公平性の観点からは、高所得の「夫婦世帯」にまで新たな控除を適用する必要はないとの指摘もあり、適用を受ける世帯に所得制限を設ける可能性が高いようです。
一方で政府税調は、5つの見直し案とともに、配偶者の働き方の選択に関しては、企業の家族手当制度、社会保険制度についても検討が必要としています。政府税調に提出された資料によると、家族手当制度がある民間企業は76.5%、うち配偶者に家族手当を支給する企業は90.3%。さらに、配偶者の収入に制限があるのは84.9%に上り、収入制限の額は「130万円」が25.8%、「103万円」が68.8%とされています。こうしたことから、「103万円」が就労を抑制する心理的な「壁」(いわゆる103万円の壁)になっているのではないかと指摘しています。
配偶者控除に代えて、「夫婦世帯」に対し、若い世代の結婚や子育てに配慮する観点から、新たな控除を新設する案です。新たな控除は配偶者の収入にかかわらず適用されることとし、働き方の選択に対して中立的な税制とします。
ただし、これまで配偶者控除を受けてこなかった世帯も広く対象にすると、新たに恒久的な財源が必要となるため、適用を受ける世帯に所得制限を設ける可能性が高くなっています。