不動産の売却はその対価が多額になることから、消費税の負担への影響が大きくなります。土地・建物を売却した場合、建物は消費税の課税対象ですが、土地は非課税となっています。ただし、自宅などの非業務用の建物は、たとえ課税事業者であっても、消費税は課税されません。問題となるのは、貸家やアパート、店舗などの建物である事業用不動産の売却ですが、ここでも消費税が課税されるのは課税事業者のみとなります。免税事業者に該当する場合は、その対価がどんなに大きくても、売却に係る消費税の負担は生じません。
しかし、注意したいのは、売却した年以降の消費税に影響を及ぼすことです。免税事業者が業務用建物を売却した結果、その年の課税売上高が1000万円を超えた場合には、翌々年に課税事業者となるので、翌々年に課税売上があった場合には、その分に消費税が課税されることになります。
また、平成25年1月1日以後に開始する年については、特定期間(その年の前年の1月1日から6月30日までの期間)の課税売上高が1,000万円を超えた場合には、基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円以下であっても、翌年から課税事業者とされます。
ただし、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することもできるので、その6ヵ月間の給与等支払額が1,000万円を超えていなければ、免税事業者と判定することができます。したがって、給与等支払額の状況によっては、特定期間を避けて、7月以降の売却を検討する必要があります。そのほか、基準期間の課税売上高が5,000万円を超える場合には、消費税簡易課税制度選択届出書を提出している場合であっても、当課税期間については簡易課税を適用することができません。つまり、建物の売却により基準期間の課税売上高が著しく増加すると、課税事業者の判定や簡易課税制度の適用の可否にも影響が及ぶことになります。
免税事業者が事業用不動産を売却する場合には、相手方に消費税を請求していいのか疑問が生じますが、免税事業者との取引であっても課税取引であれば消費税自体は発生し、買い手側が課税事業者であれば、支払った消費税を仕入税額控除として計算することになります。そのため、免税事業者であっても、建物の売価に係る消費税を請求することが一般的です。もちろん土地の売価部分は、消費税は請求できません。