「法人向け事業承継税制」が近年改めて注目されている。事業承継の際の
贈与税・相続税の納税を猶予する「法人向け事業承継税制」は、2018年度
の税制改正で抜本的に拡充されました。
中小企業庁によると、拡充前は、年間400件程度の申請でしたが、拡充後は、
足元(本年2月現在)の申請件数は年間6000件に迫る勢いであり、爆発的に
伸びています。今後10年の間に、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・
小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万が後継者未定
とのことです。
こうしたなか、事業承継税制による中小企業・小規模事業者の円滑な事業承継
が期待されています。2018年度税制改正では、10年間(2018年1月1日から
2027年12月31日)の特例措置として、各種要件の緩和を含む抜本的な拡充が
行われました。基本は、2018年4月1日から2023年3月31日までの5年間
以内に承継計画を作成して都道府県に提出した会社(「特例認定承継会社」)が、
贈与・相続による事業承継を行う場合に適用されます。
事業承継税制の抜本拡充の概要は、(1)対象株式数の上限を撤廃し全株式を適用
可能にし、納税猶予割合も100%に拡大することで承継時の税負担ゼロになる。
(2)親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継も
対象にする。(3)承継後年間平均8割以上の雇用維持要件を未達成の場合でも、
猶予を継続可能に。(4)売却額や廃業時の評価額を基に納税額を計算し、承継時
の株価を基に計算された納税額との差額を減免する。
旧制度では、経営承継期間中、後継者が自社株式を譲渡した場合や、会社を譲渡・
合併・解散した場合には、納税猶予税額を全額納付する必要がありました。
しかし、改正後は、経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合において、
承継期間経過後に、会社の非上場株式の譲渡や合併による消滅、会社を解散する
ときは、その時点での株式評価額で税額を再計算して一定範囲で猶予税額を減免
します。後継者の将来リスクの軽減が期待できます。
☆☆経営環境の変化☆☆
左記の猶予税額を減免する「経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合」とは、
直前の事業年度終了の日以前3年間のうち2年以上、特例認定承継会社が赤字の場合
や売上高がその年の前年の売上高に比べて減少している場合、直前の事業年度終了の
日における特例認定承継会社の有利子負債の額が、その日の属する事業年度の売上高
の6月分に相当する額以上ある場合、などをいうこととされています。