福利厚生というと、一般には、社宅・独身寮、慶弔・災害見舞金、運動施設や保養所などの余暇施設、文化・体育・レクリエーション活動の支援、資格取得や自己啓発の支援、社員食堂、などが挙げられます。従業員のモチベーションアップの手段として多くの企業で利用されています。
税制上、福利厚生に関する支出は個人の給与とはされず、また法人側では損金となりますが、原則から外れた場合に思わぬ課税がされることがあります。今回は税務当局に否認されないための判断ポイントをお伝えしたいと思います。
◆従業員の経済的利益は原則課税と考えたほうがよい。
従業員に現金ないしは現物の利益が供与された場合、原則は課税される、と認識したほうがよいです。そのうち、少額なものであることを理由に、また政策的な配慮を理由に、非課税の例外が設けられています。つまり、非課税扱いは極めて限定的なケースであるとご認識頂ければと思います。
<非課税となる現物給与の例>
通勤手当
通勤手当月額15 万円までは非課税
ポイント:必要経費となるもの(=業務と直接関連するもの)は非課税
職務に必要な技術などを習得する費用
職務に「直接」関連する技術等取得費用であれば課税されない
(税理士等の個人に帰属する資格に係る費用補助は給与課税)
創業記念品、永年勤続表彰記念品
創業記念品は1 万円以下であること等の条件あり。永年勤続表彰は勤続10 年以上などの要件あり。
食事の支給
従業員・役員が半額以上負担でかつ会社負担が月額3,500 円までは非課税。
社宅や寮
従業員・役員が一定の負担をしている場合には非課税。
社員旅行
4 泊5 日以内で、かつ実際の参加人数が全社員の半数以上等の要件あり
ポイント:強制参加の社内イベントには経済的利益は発生せず基本的に非課税でよい(金額は注意)
◆雇用保険料率が引下げに
雇用保険料率(失業等給付)は、労働者負担・事業主負担とも1/1000 ずつ引き下げられました。また、雇用保険二事業の保険料率も0.5/1000 引き下げられました。これにより、一般の事業の雇用保険料率は11/1000(労働者負担4/1000+事業主負担7/1000)となります(平成27 年度は13.5/1000)。
◆障害者に対する差別が禁止されます
すべての事業主を対象に、募集・採用、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、障害者に対する差別が禁止されました。また、障害者一人ひとりの状態や職場の状況などに応じて合理的配慮の提供が求められることとなりました(ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りではありません)。
◆女性の活躍推進に向けた計画の策定・届出が必要に
常時雇用する労働者の数が301 人以上の一般事業主は、女性の活躍推進に向けた一般行動計画の策定・届出や情報公表等が義務付けられました。常時雇用する労働者の数が300 人以下の一般事業主は、努力義務となっています。
◆介護(補償)給付の最高限度額および最低保障額が引上げに
労災保険法に基づく介護(補償)給付の最高限度額及び最低保障額が次のように変更となりました。
・最高限度額:介護を要する程度による区分に応じて
→月額104,950 円(+380 円)、52,480 円(+190 円)
・最低保障額:介護を要する程度による区分に応じて
→月額57,030 円(+240 円)、28,520 円(+120 円)。
◆健康保険の標準報酬月額が変更されました
健康保険の標準報酬月額の上限が、47 等級(121 万円)から50 等級(標準報酬月額139 万円。報酬月額1,355,000 円以上)に引き上げられました。併せて、標準賞与額の年間上限が540 万円から573 万円に引き上げらました。
◆平成28 年度の年金額は据え置き
平成28 年度の老齢基礎年金は、昨年度から据え置き、満額月65,008 円となります。平成28 年度の国民年金保険料額は月16,260 円(平成27 年度15,590 円)です。