相続に際して、相続人間で意見がまとまらず、遺産分割協議を行うケースも少なくありません。
遺産分割協議もまとまらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。遺産分割
調停が成立しなかった場合には、自動的に遺産分割審判手続きに移り、家事審判官(裁判官)
によって遺産分割の審判がなされます。このように、結論が出るのに時間がかかる一方で、
問題となってくるのは、相続税の申告期限が近づいてきている場合です。
相続税がかかるケースでは、遺産分割協議が成立しないまま何年も経過してしまうと、小規
模宅地の特例や配偶者の税額軽減の特例等、相続税の軽減を受けられなくなることがあります。
また、相続の発生から10ヵ月以内に申告・納税をしなかった場合、加算税や延滞税を余分に
払わなければならなくなります。
遺産分割がまとまらない場合は、法定相続分で相続したと仮定して、申告期限内にいったん
申告・納付を済ませる必要があります。そして遺産分割協議がまとまったら、修正申告もしく
は更正の請求を行い、相続税の納税額が不足していた場合は不足分を納税し、過払いしていた
場合は還付してもらいます。つまり、仮に申告・納税しておくことでペナルティを抑えること
ができるのです。
ただし、未分割申告の注意点があります。主なものとしては、事業用や居住用宅地等の評価で
一定の割合を減額できる小規模宅地等の課税価格の特例や、配偶者の税額軽減の特例を受ける
ことができないことです。そこで、相続税の申告書の提出期限までに相続等により取得した
財産の全部又は一部が分割されていない場合には、相続税を申告する際に、その未分割財産を
申告書の提出期限から3年以内に分割する旨の「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して
提出します。そうすることで、相続税の申告期限から3年以内に分割が行われた場合は、分割が
行われた日の翌日から4ヵ月以内に更正の請求を行い、これらの特例が適用できることになります。
☆☆3年以内に未分割☆☆
相続税の申告期限から3年以内に未分割の場合は、申告期限後3年を経過する日の翌日から
2ヵ月を経過する日までに「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の
承認申請書」を提出します。所轄税務署長の承認を受けた場合には、判決の確定など一定の日
の翌日から4ヵ月以内に分割を行い、分割が行われた日の翌日から4ヵ月以内に更正の請求を
行えば、これらの特例が適用できることになります。